■人と自然と歴史の街
奈良は歴史の街であると同時に、人と自然が共生する街でもあります。98年に世界遺産登録された「古都奈良の文化財」でも、社寺を中心とする歴史・文化そのものの価値に加え、周辺環境の保全が高く評価されました。歴史と自然が一体のものとして、今日までつながっている様子は、まさに世界的な価値があるといえるでしょう。しかし近年は、車の排気ガスによる大気中の汚染物質が世界遺産にダメージを与えたり、毎年100頭近い鹿が交通事故に遭うなど、必ずしも人と自然が共生できているとは言えません。
■持続可能な観光の形
一方、奈良の基幹産業は観光業ですが、修学旅行に代表されるこれまでの大量誘客・大量消費型から、個人旅行者を中心とした高付加価値・低環境負荷型に変わろうとしています。観光業というと、ホテルや旅館、土産物だけのイメージがありますが、農産物の供給から土産物の製造、ホテルの改修から印刷まで、その範囲は実に幅広い産業にまたがります。
他府県では大規模工場誘致が産業振興策の中心ですが、歴史と自然の街である奈良では、やはり自然環境にも配慮した持続可能な産業として、新しい観光の形を探るべきではないでしょうか。
2009年6月22日 22:00
[奈良市政]