市民が主役の奈良市政をめざす仲川げんの活動日記。

仲川げん
2012年3月25日 23:38 [日記]

衆院公聴会報告

報告が遅くなりましたが去る3月2日(金)に行われた衆議院予算委員会の中央公聴会に、公述人として意見を述べる機会を頂きました。公聴会は国会法で「総予算及び重要な歳入法案」について開催が義務付けられているものですが、通常は大学教授や経済団体の長が多いようで、地方の首長が呼ばれる事は珍しいとのことです。私は与えられた20分の中で3点について述べました。

まず1点目は「国と地方の行革努力の差」について。職員数や給与の削減率、行革実績などを基に国の遅れを指摘しました。最近は「増税前に行革を」が世論の潮流になってきましたが、実際に数字で比較してみると予想以上に国は「濡れ雑巾」状態であることが分かりました。
例えば全国の市町村職員数は平成17年度で約143万3000人でしたが、平成22年度では約128万9000人となっており5年間で14万4000人、10.0%の削減を図っています。また同期間での奈良県内の市町村全体では1万5753人から1万3748人へと2005人、12.7%の削減となっており、奈良市でも3354人から3066人へと288人、8.6%削減となっています。(ちなみに、奈良市では今後平成28年度までにさらに150名を削減する予定)一方、国における人員削減は、平成17年度の約32万6800人から平成22年度は約29万7500人となっていますが、社会保険庁廃止分を除くと実質的には約1万7000人、5.5%の削減に留まっています。
また給与削減の取り組みでは、全国約1700の市区町村中、およそ6割が独自の給与削減を実施していますが、国では今回の約8%のカットが決定されるまでは、一切削減努力が行われてこなかったのが実情です。
取組み温度の差は行革面からも覗えます。奈良市では私の就任した2009年の夏以降、約2年間の間に事業仕分けで約7億2000万円、その他事務事業の見直し等により約12億1000万円、入札制度改革による効果額として約25億7000万円等、合計約50億7000万円の行革効果を生み出しました。これは平成22・23年度の2カ年の一般会計当初予算額の約2%に相当します。一方国では、昨年8月に出された「マニフェストの中間検証」によると、3度にわたり実施された事業仕分けにより約1兆3500億円、国家公務員総人件費の削減として約1600億円、合計約1兆5000億円の削減を図ったとされていますが、これは一般会計比ではわずか0.8%に留まり、非常に限定的と言わざるを得ません。

2点目では「国の制度によって地方が振り回されている現状」について指摘しました。子ども手当のように短い期間で何度も制度変更が発生すると現場の窓口が混乱するだけでなく、システム改修費もムダである点(2年半で3回・約1900万円)を指摘しました。子ども手当以外にも毎年さまざまな国の制度変更により、多額の改修費を全国の自治体がシステム会社に支払っており、ある種「システム会社を利するための制度変更ではないか?」と疑いたくなるような実態があります。この点については既に自治体間の連携による共同開発等も進んできていますが、本来は国がパッケージ化したものを無償提供するなど、積極的に経費節減・負担軽減に力を入れるべきだと思います。
また、子ども手当に話を戻すと、手当支給に伴う人件費を含めた事務費は、原則「子ども手当事務取扱交付金」として国から支払われますが、奈良市の場合、平成23年度では実際の事務費が3935万7000円であるのに対し、交付額は3560万5000円と、400万円近い持ち出しが発生しています。地方が求めた政策であれば、一部負担もやむなし、と考える事もできますが、国が一方的に掲げた政策に地方が予算面でも「お付き合い」をせざるを得ない状況は納得がいくものではありません。1つひとつは大きな金額ではなくとも、このような事例の積み重ねが基礎自治体の負担となっている状況がある、と訴えました。

3点目は総括として、「現場とかけ離れたところで政策や制度を作るからズレたものやムダなものが多くなる。国がしくみを作り地方が従うという構造をもう一度根本的に変えなければならない。それこそが民主党政権が掲げた地域主権ではなかったか」と問いました。
いま最も必要な事は、国と地方の役割と責任、財源と権限の「仕分け」を明確に行い、国・都道府県・市区町村の三重行政のムダを徹底排除することです。そしてその作業は、国において、国の都合によって行われるのではなく、現場を預かる基礎自治体と共に行うものでなければなりません。なぜならば、地方自治の本旨は「補完性の原則」であり、まず基礎自治体(市区町村)でできることは全てやり、そこではどうしても困難なものや広域的に処理した方が効率的なものは広域自治体(都道府県)で対応し、さらに余りあるものがようやく国の所管事項となるべきだからです。国が地方を命令一下・上意下達で支配する現状は全く逆であり、現場の創意工夫と自立を損なっている状況を解消することが日本再興の切り札であることは間違いありません。国の意思決定における地方のコミットメントとして今年度、国と地方の協議の場が設置されたことは大きな前進と考えますが、制度的にはまだ未完成といえます。例えば、日本の人口の9割以上となる約1億1000万人が暮らす809市の声は、全国市長会の会長が一人で代弁するしか方法がない状態です。少なくとも、政令指定都市・中核市・特例市といった各都市区分ごとの代表者は入れるべきである、と訴えました。

以上は概要ですが、各党の代表者からの質疑も含め、「衆議院TV」の「ビデオライブラリ」の「3月2日」に当日の様子が録画されていますので、ぜひご覧ください。
http://www.shugiintv.go.jp/

 

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