奈良市では不祥事を起こさない組織体制の構築に向け、外部の弁護士3名で構成する「奈良市職員アンケート調査委員会」を6月に立ち上げ、3046名の全職員を対象に記名式で情報提供を求めました。これまでは問題が発覚してから対処する事後対応が専らでしたが、不祥事の芽を事前に察知し、未然に防ぐ事が重要だと考えました。そこで本アンケートでは、1)公金の取扱に関するもの、2)それ以外、を対象に「不祥事や市民の信用失墜につながる恐れのあるある事案」を知っているかどうかを問いました。
結果としては全2778名のうち、公金の取り扱いに関する不祥事情報は53名(うち7名は具体的記載なし)、その他の不祥事情報は435名(うち7名は具体的記載なし)から「心当たりがある」との回答が寄せられました。寄せられた情報は原則として、情報提供者やその周囲へのヒアリングまでを委員会が行い、その後の追加調査や処分等については市側で行うこととしています。問題が発生した要因としては、「個人の資質」が83%で最多ですが、「管理体制」(50%)や「職場風土」(39%)もあり、今後の検討課題となりました。
不祥事につながる具体的な情報としては
・入札に関する問題
・国の調査費の不正流用の可能性
・タイムカードの不正代打の可能性
・喫煙等による頻繁な職場離脱や遅刻、等勤務態度に関する指摘、等が挙がりました。
市では今後、個別事案ごとに追加調査の必要性を判断し、3名の委員(弁護士)とも相談しながらしっかりと事実確認を行う予定です。当然、問題事案が明らかになれば処分等、厳しい対応をして参ります。
一方で、83%もの職員が「不祥事をなくすためにどうすればよいと思うか」の設問に回答しており、そのボリュームは160ページにも及びます。問題を起こす職員がいる一方、圧倒的多数の職員は不祥事に対して真剣に捉え、自分たちの努力で体質改善を図ろうと高い意識を持っていることが伺えました。この点については委員の皆さんも私も同感で、今後の内発的な信頼回復に希望が持てる結果だったと感じています。
行政だけでなく、企業等も含めた全ての「組織」は、できることであれば不祥事は表沙汰にしたくない、と考える風潮がまだあります。議会の一部からも、他人の悪口を告げ口するようなアンケートは職員を不安にさせるだけだ、との批判もありました。しかし私は、問題があるにも関わらず放置していては、いつまでたっても不祥事が繰り返されるだけであり、根本的な解決にならないと思います。その点では、これまでの奈良市は、正に「先送り・見て見ぬふり体質」だったと言えます。しかしこれからは全職員がしっかりとした現状認識を持ち、一刻も早く「脱不祥事体質」を達成するかが勝負だと考えています。今回の報告書は全体ではなくサマリーとして公開しています。
詳しくはアンケート調査委のページからご覧ください。
(下段、調査報告書サマリー版・設問5回答一覧)
http://www.city.nara.lg.jp/www/contents/1340933790865/index.html