全国の自治体のおよそ半数が、2040年には20代~30代の女性が半減する「消滅可能性都市」に陥ると警鐘を鳴らした「増田レポート」の衝撃は大きく、6月議会でも質問が相次ぎました。県内でも市部では72%減が予測される宇陀市から、僅か1.8%減に留まる香芝市まで幅が広いのが特徴で、奈良市は45.6%と12市中6位となっています。
人口減少については以前より指摘されていましたが、今回のレポートでは特に地方から都市部への人口流出が与える影響(社会動態)に着目し、地方の若者による「人口の再生産力」が街の存続を左右するとしています。
実際に過去10年間の奈良市の人口増減を調べてみると、例えば10年前に20歳~24歳の女性人口は約1万2千人でしたが、10年後に30歳~34歳になると約1万人に減っているという状況があります。これは死亡された方を除けば市外・県外へ転居された方(厳密に言えば転入者と転出者の差)が多かったと言えます。
現在、政府では新たな地方戦略の1つとして地方中枢拠点都市という制度を検討しています。これは地方の人口20万人以上の都市が核となり、近隣自治体と共同でより高度なサービスを効率的に提供しようとするものです。従来の市町村合併方式では、街のアイデンティティが失われるという危機感から前向きに進まなかった地域でも、各自治体は存続させたまま、運営面の共通化で合理化メリットを得られるという利点があります。まずは三大都市圏以外で、かつ昼夜間人口比率1以上が条件となっていますので、典型的なベットタウンである奈良市は対象外となりますが、引き続き国に対し要件緩和を訴えて行きます。
いずれにしましても、今回発表されたレポートが地方都市に暮らす私たちに与えたインパクトは大きいものがありますが、過剰反応も動揺しか生まないと考えます。しっかりとしたデータに基づき、都市の未来像を予測してスピード感のある対策を矢継ぎ早に打つことが重要です。特に女性や若者の活躍しやすい環境を作ることが、人口減少のみならず地方の活力と革新をもたらす最大の成長戦略とも言えます。
奈良市でもこれまで以上に独自の対策を総合的に講じて行きたいと思います。