長かった9月定例市議会が閉会しました。今議会での中心的議論はやはり補正予算案。特に国の人口急減論議やその後の地方創生に向けた取り組みを踏まえ、奈良市として策定した緊急対策事業に対する白熱した議論が注目されました。今回我々が提案した事業は関連事業も合わせて以下の7事業。
1)バンビ―ホーム(学童事業)の開所時間の延長
2)就職活動中の保護者のための市役所内託児所の開設
3)学校給食で地産食材の利用拡大を図る事業
4)農産物加工施設の改修
5)シティプロモーション事業
6)JR奈良駅旧駅舎を外国人観光向けの観光案内所に整備
7)子どもにやさしいまちづくりフォーラムの開催
これに対し、議会からは、緊急性が乏しい・ニーズが見えない・財政民主主義の観点から補正予算の乱発は認められない、などの反対意見が一部会派から出されました。中にはもっとも、という意見もありますが、「反対のための反対」というものも多く辟易とする場面もありました。
まず第一に、奈良市では全体の総人口は横ばいから微減ですが、20代30代の若者に限って言えば10年で2割も減少しています。一方、女性の労働参加率は全国最低レベル。待機児童もある中でどうやって早急に改善を図るかが重要です。これまでも段階的に対応してきてはいますが、さらにスピードを上げるべし、と考えています。その理由は奈良市が定住促進のターゲットとしている関西の子育て層は、団塊ジュニア世代のマイホーム取得需要が徐々にピークを過ぎ、さらに今後の景気後退のリスク等も考えると、いち早く魅力を打ち出し、街としてのブランド力を確立した地域が生き残るということになります。
さらに就労の面からは、今後は働きながら子育て可能な街にしていくためにも、子どもが預けられないから就職できない、就職できないから保育園に入園できないという待機児童都市の悩みを解消するための市役所内託児所は突破口になると思います。今回は奈良労働局と連携し、ハローワークと近接する市役所を開放することで保護者の利便性も高いものになります。また、いわゆる「小1の壁」解消も急務で、子どもが保育園の時は19時まで預かり可能だったものが、小学校入学後に18時までとなることから就労が継続できないという悩みがありました。これに対しては、放課後の子どもたちの居場所としてのバンビ―ホームの開所時間を延長することでその壁を早急に取り払いたいと考えています。
一方、交流人口を増やす取り組みも、より迅速かつ効果的に施策を展開する必要があると考えています。昨年(平成25年)奈良市を訪れた外国人観光客は前年比1.6倍の43万5000人と非常に多く、国内人口が減少する時代の中で、外国人観光客9人で定住人口1人と同じ消費額と言われるように、戦略的に定住人口と交流人口(観光客)の2本柱で増加策を講じることが街の命運を決めます。今回はアンティークな趣のあるJR奈良駅の旧駅舎を活用し、全国で7か所しか認定されていないJNTO「カテゴリ3」レベルのサービスを提供することで、外客誘致の大きなアドバンテージを生み出す構想です。奈良は言わずと知れた観光都市ですが、世界の観光地間で競争が激化する中、単に世界遺産があるだけで安穏としていられる状況でもなく、国際観光市場の中でいかに存在感を出すかが極めて需要だと考えています。
以上のような考えを以て主張・反論しましたが、最終的には数の論理で2)5)6)の3事業を削除する修正案が可決されました。今回の議論の中でやはり課題となったのは緊急性や必要性についての意識差だったと思います。このあたりの評価は、議会中継のライブラリや議事録等から市民の皆さんにもぜひご覧いただき、どちらの主張がより理に適っているかをご判断いただければ幸いです。
奈良市議会中継(ライブ・録画)
http://www.gikai-tv.jp/dvl-narashi/2.html